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当コラムについて
コラム「中小企業をめぐる冒険」では、様々な事象・現象を手がかりに、21世紀にふさわしい、有り得べき中小企業像・可能性のある中小企業の戦略ビジョン・実効性のある具体的方策を探す、思考の旅に出たいと思います。
コラム「中小企業をめぐる冒険」では、様々な事象・現象を手がかりに、21世紀にふさわしい、有り得べき中小企業像・可能性のある中小企業の戦略ビジョン・実効性のある具体的方策を探す、思考の旅に出たいと思います。
問題意識
大きな環境変化が生じている今、機能不全・思考停止・変化への不適合を起こしている集団・個人は、衰退するしかありません。そんな危機的状況において、明日の日本社会・日本経済を担う新たな中小企業の台頭が望まれています。
大きな環境変化が生じている今、機能不全・思考停止・変化への不適合を起こしている集団・個人は、衰退するしかありません。そんな危機的状況において、明日の日本社会・日本経済を担う新たな中小企業の台頭が望まれています。
日本の中小企業の更なる発展を目指して
TransNetCreation では、微力ではありますが、日本の中小企業の更なる発展に寄与するべく、当コラムを、企業理念の具現化や経営革新の実践に真摯に取り組まれている方々のお役に立てるものにしたいと考えています。
TransNetCreation では、微力ではありますが、日本の中小企業の更なる発展に寄与するべく、当コラムを、企業理念の具現化や経営革新の実践に真摯に取り組まれている方々のお役に立てるものにしたいと考えています。
今回は、コラム「中小企業をめぐる冒険」の第1回目(vol.1)となるわけですが、「ブルー・オーシャン戦略」を取り上げたいと思います。「ブルー・オーシャン戦略」は、2005年頃に登場した戦略概念で、当時日本でも大きな話題になり、書籍もかなり販売部数を伸ばしたようです。しかし、日本では、多くの事物が流行現象としてブーム化され、消費され、使い捨てられる傾向があるように、戦略概念としての「ブルー・オーシャン戦略」もその例外ではないのか、今ではあまり言及されることもないようです。そして、以後も、グローバリズムは進展し、競争は激化し、多くの財においてコモディティ化するリスクがさらに高まっています。そこで当コラムの初回となる今回は、コモディティ化に抗する戦略概念として、「ブルー・オーシャン(=競争のない市場)」の創出を目指す「ブルー・オーシャン戦略」について再考したいと思います。前半でその概要をまとめた上で、後半でそれを既存の経営戦略理論の中に位置付け(つまり、理論をフローとして消費するのではなく、ストックとして回収し)、現代の中小企業にとってのその意義を考えます。結論は、タイトルの通りです。
※最近では日常的にも「ブルー・オーシャン戦略」への言及・記述が散見されるようになっています。また、IT系の資格試験である「情報処理技術者試験」では、「ブルー・オーシャン戦略」が、2012年5月に更新された 新出題範囲 に 追加 されています。このような状況から、「ブルー・オーシャン戦略」も、現代の経営環境において有効な考え方であるとして、SWOT分析 や 成長マトリクス(アンゾフ) などと並ぶ基本的戦略として位置付けられるようになったと考えても良さそうです。2014年06月06日追記
※最近では日常的にも「ブルー・オーシャン戦略」への言及・記述が散見されるようになっています。また、IT系の資格試験である「情報処理技術者試験」では、「ブルー・オーシャン戦略」が、2012年5月に更新された 新出題範囲 に 追加 されています。このような状況から、「ブルー・オーシャン戦略」も、現代の経営環境において有効な考え方であるとして、SWOT分析 や 成長マトリクス(アンゾフ) などと並ぶ基本的戦略として位置付けられるようになったと考えても良さそうです。2014年06月06日追記
オンリーワン戦略としてのブルー・オーシャン戦略
中小企業にとってのブルー・オーシャン戦略
Section.1
ブルー・オーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)とは
ブルー・オーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)とは、
INSEAD というビジネススクールの教授である
W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏が、
その著書の中で提唱した経営戦略である。
日本語版の副題に「競争のない世界を創造する」とあるように、
「非競争状態を作り出すためにはどのようにすべきか」ということが、主題となっている。
著書は、2005年に出版され、日本語版公式サイト によると、
29カ国語に翻訳され、100カ国以上で発売されたという。
このコラムでは、まず、前半で、著者達の主張に沿ってその概要を把握し
(Section.2 〜 13)、
その後で、これまでの経営戦略論の枠組みにおいて、その意義・位置付けを考察する
(Section.14 〜 19)。
そして、最後に、現代の中小企業にとってのブルー・オーシャン戦略について、
その意義を考えることにする
(Section.20 〜 21)。
※当コラムは、「スライドショー」になっています。
Next ボタン のクリックにより、
ページ遷移無しで、瞬間的に「次のセクション」に切り替わります。
同様に、Prev ボタン のクリックにより「1つ前のセクション」に、
First ボタン のクリックにより「最初のセクション」に、
Last ボタン のクリックにより「最後のセクション」に切り替わります。
INSEAD というビジネススクールの教授である
W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏が、
その著書の中で提唱した経営戦略である。
日本語版の副題に「競争のない世界を創造する」とあるように、
「非競争状態を作り出すためにはどのようにすべきか」ということが、主題となっている。
著書は、2005年に出版され、日本語版公式サイト によると、
29カ国語に翻訳され、100カ国以上で発売されたという。
このコラムでは、まず、前半で、著者達の主張に沿ってその概要を把握し
(Section.2 〜 13)、
その後で、これまでの経営戦略論の枠組みにおいて、その意義・位置付けを考察する
(Section.14 〜 19)。
そして、最後に、現代の中小企業にとってのブルー・オーシャン戦略について、
その意義を考えることにする
(Section.20 〜 21)。
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Section.2
ブルー・オーシャン戦略における「ブルー・オーシャン」とは(1)
ブルー・オーシャン戦略とは、
著者達は、
「ブルー・オーシャン」と呼ばれる市場状態を創造する
ことを目指す戦略である。著者達は、
「既存の産業すべて」=「既知の市場空間」
を「レッド・オーシャン(赤い海)」
と呼ぶのに対して、「いまだ生まれていない市場」=「未知の市場空間」
を「ブルー・オーシャン(青い海)」
と呼ぶ。Section.3
ブルー・オーシャン戦略における「ブルー・オーシャン」とは(2)
つまり、
(1)市場を海(オーシャン)と喩えて表現している
(2)既知の市場空間(=既存市場)が、激しい競争にさらされ、企業は流血状態となるということから
(血の色=危険を意味する色=レッド)、
それに対して「レッド・オーシャン」と命名している
(血の色=危険を意味する色=レッド)、
それに対して「レッド・オーシャン」と命名している
(3)未知の市場空間(=新規市場)が、競争を無力化し、
企業にとって新たな売上機会・利益機会となり、今後目指すべき目標となるということから
(赤に対して意味的に反対の色=安心・安全を意味する色=ブルー)、
それに対して「ブルー・オーシャン」と命名している
というわけである。企業にとって新たな売上機会・利益機会となり、今後目指すべき目標となるということから
(赤に対して意味的に反対の色=安心・安全を意味する色=ブルー)、
それに対して「ブルー・オーシャン」と命名している
Section.4
ブルー・オーシャン戦略における「ブルー・オーシャン」とは(3)
著者達が意図していると思われるニュアンスを汲み取ると、
ここで用いられている「市場」という言葉は、「製品分野」もしくは「産業」などの意味に近い。
つまり、ブルー・オーシャン戦略とは、
ここで用いられている「市場」という言葉は、「製品分野」もしくは「産業」などの意味に近い。
つまり、ブルー・オーシャン戦略とは、
(1)「未知の新しい製品分野を開拓する」もしくは「未知の新しい産業を創造する」
(2)それにより、「非競争状態(=他社との競争がない状態)を創出する」
(3)それにより、「高収益を目指す」
という戦略であると言える。Section.5
ブルー・オーシャン戦略の特徴:
競争戦略とは異なる戦略である
「未知の市場空間を創造する」ということについては、
それに対して、著者達は、ブルー・オーシャン戦略は、
これまでの経営戦略論において基本戦略(=定石)として位置付けられている
「競争戦略」における「差別化戦略」とどのように異なるのか、
という疑問が浮上する。「競争戦略」における「差別化戦略」とどのように異なるのか、
それに対して、著者達は、ブルー・オーシャン戦略は、
マイケル・ポーター氏が提唱した競争戦略とは異なる戦略である
という趣旨のことを明確に述べている。Section.6
ブルー・オーシャン戦略の特徴:
新しいパイ(=市場)を創造する
著者達は、
競争戦略が、競合他社とのライバル関係における優位性の構築に力点を置く
のに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
買い手や自社にとっての価値創造と競争のない未知の市場空間の開拓に力点を置く
とする。すなわち、買い手や自社にとっての価値創造と競争のない未知の市場空間の開拓に力点を置く
競争戦略は、レッド・オーシャンに対応する戦略であり、
大きさの限られた1つのパイを複数企業が奪い合うという「ゼロサム」的市場観である
のに対して、大きさの限られた1つのパイを複数企業が奪い合うという「ゼロサム」的市場観である
ブルー・オーシャン戦略は、
競争のないブルー・オーシャンという新しいパイを創造する「プラスサム」的市場観である
と主張する。競争のないブルー・オーシャンという新しいパイを創造する「プラスサム」的市場観である
Section.7
ブルー・オーシャン戦略の特徴:
「低コスト」と「差別化(=高付加価値化)」を同時に実現する
また、競争戦略では、
ブルー・オーシャン戦略は、
(1)「低コスト」に競争優位を求める「コスト・リーダーシップ戦略」
(2)「差別化」に競争優位を求める「差別化戦略」
のどちらかを選択することになる、のに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
「低コスト」と「差別化(=高付加価値化)」を同時に実現することを目指す戦略である
とする。Section.8
ブルー・オーシャン戦略の特徴:
全社的取り組みにより実行・展開する
そして、ブルー・オーシャン戦略を実行・展開していくためのアプローチを、
この用語には、
著者達は、多くのイノベーションが、供給サイドである企業内の部分的な次元に留まり、
需要サイドである顧客にとっての価値創造には至らないという大きな傾向があることに対して、
バリュー・イノベーション
と呼んでいる。この用語には、
需要サイドに関する「価値(バリュー)」と供給サイドに関する「革新(イノベーション)」を等しく重視する
という意味が込められているようである。著者達は、多くのイノベーションが、供給サイドである企業内の部分的な次元に留まり、
需要サイドである顧客にとっての価値創造には至らないという大きな傾向があることに対して、
ブルー・オーシャン戦略は、
企業の全社的な取り組みによって達成され、顧客や自社にとっての価値創造をもたらすものである
という主張を込めて、この用語を用いている。企業の全社的な取り組みによって達成され、顧客や自社にとっての価値創造をもたらすものである
Section.9
ブルー・オーシャン戦略の開発・構築(概要)
ブルー・オーシャン戦略は、具体的には、
この中でもブルー・オーシャン戦略の中核を担うのが「戦略キャンバス」である。
以下4つのセクションでは、これらについて解説するが、これらのツールが具体的にどのようなものであるのかは、
是非、ブルー・オーシャン戦略の原典である書籍「ブルー・オーシャン戦略」を実際に手に取ってご覧いただきたい。
(1)戦略キャンバス
(2)4つのアクション
(3)アクション・マトリクス
という3つのツールを用いて策定される。その際、(4)6つのパス
というアプローチにより検討を行う。この中でもブルー・オーシャン戦略の中核を担うのが「戦略キャンバス」である。
以下4つのセクションでは、これらについて解説するが、これらのツールが具体的にどのようなものであるのかは、
是非、ブルー・オーシャン戦略の原典である書籍「ブルー・オーシャン戦略」を実際に手に取ってご覧いただきたい。
Section.10
ブルー・オーシャン戦略の開発・構築(1):「戦略キャンバス」
戦略キャンバスとは、
横軸に価値要因を並べ、縦軸にそのスコアをとり、製品毎に、各価値要因のスコアをマッピングする。
マッピングされた点を結んで描かれた折れ線グラフが、その製品の価値曲線となる。
ブルー・オーシャン戦略では、まず、既存の製品について、戦略キャンバス上で価値曲線を描いて、
その後で、これから開発する製品の価値曲線を検討する。
他社の既存の製品や自社がこれから開発する製品のポジショニングを
「価値曲線」として視覚化するための、ブルー・オーシャン戦略の中心的なツール
である。「価値曲線」として視覚化するための、ブルー・オーシャン戦略の中心的なツール
横軸に価値要因を並べ、縦軸にそのスコアをとり、製品毎に、各価値要因のスコアをマッピングする。
マッピングされた点を結んで描かれた折れ線グラフが、その製品の価値曲線となる。
ブルー・オーシャン戦略では、まず、既存の製品について、戦略キャンバス上で価値曲線を描いて、
その後で、これから開発する製品の価値曲線を検討する。
Section.11
ブルー・オーシャン戦略の開発・構築(2):「4つのアクション」
そして、その時に用いるのが、4つのアクションという考え方である。
4つのアクションとは、
つまり、各価値要因について、この4つのアクションを検討する。
例えば、Aという価値要因があれば、これから開発する製品においては、それを
「取り除くのか=スコアをゼロにする」のか、
「思い切り減らすのか=スコアを大きく下げる」のか
「大胆に増やすのか=スコアを大きく上げる」のか、ということである。
さらに、A以外に「新しく付け加えるべき価値要因がないのか」を検討する。
4つのアクションとは、
(1)取り除く
(2)思い切り減らす
(3)大胆に増やす
(4)付け加える
である。(2)思い切り減らす
(3)大胆に増やす
(4)付け加える
つまり、各価値要因について、この4つのアクションを検討する。
例えば、Aという価値要因があれば、これから開発する製品においては、それを
「取り除くのか=スコアをゼロにする」のか、
「思い切り減らすのか=スコアを大きく下げる」のか
「大胆に増やすのか=スコアを大きく上げる」のか、ということである。
さらに、A以外に「新しく付け加えるべき価値要因がないのか」を検討する。
Section.12
ブルー・オーシャン戦略の開発・構築(3):「アクション・マトリクス」
そして、最後に、その結果を、アクション・マトリクスとしてまとめる。
アクション・マトリクスとは、
アクション・マトリクスとは、
2×2のマトリクスで、
上述の4つのアクション「取り除く」「思い切り減らす」「大胆に増やす」「付け加える」をマトリクスの各象限に割り当て、
その具体的な取り組みを整理して記述する
というものである。上述の4つのアクション「取り除く」「思い切り減らす」「大胆に増やす」「付け加える」をマトリクスの各象限に割り当て、
その具体的な取り組みを整理して記述する
Section.13
ブルー・オーシャン戦略の開発・構築(4):「6つのパス」
また、新しい価値曲線を見い出すために6つのアプローチがあるとして、これを「6つのパス」と呼んでいる。
すなわち、
すなわち、
(1)代替産業に学ぶ
(=視野を拡げて、同業他社以外の代替産業にも目を向ける)
(=視野を拡げて、同業他社以外の代替産業にも目を向ける)
(2)業界内の他の戦略グループから学ぶ
(=視野を拡げて、現状では直接の競争相手とはなっていない同業他社にも目を向ける)
(=視野を拡げて、現状では直接の競争相手とはなっていない同業他社にも目を向ける)
(3)買い手グループに目を向ける
(=視野を拡げて、今までとは異なる買い手グループにも目を向ける)
(=視野を拡げて、今までとは異なる買い手グループにも目を向ける)
(4)補完財を見渡す
(=視野を拡げて、同業他社以外の補完財にも目を向ける)
(=視野を拡げて、同業他社以外の補完財にも目を向ける)
(5)機能志向と感性志向を切り替える
(=機能志向・感性志向という前提(=固定観念)を取り払う)
(=機能志向・感性志向という前提(=固定観念)を取り払う)
(6)将来を見渡す
(=トレンドを注視し、視野を現在から将来に向ける)
である。(=トレンドを注視し、視野を現在から将来に向ける)
Section.14
経営戦略論におけるブルー・オーシャン戦略の意義・位置付け
以上、ここまで、ブルー・オーシャン戦略について、著者達の主張に沿ってその概要を把握してきた。
そこで、これからのセクションでは、ブルー・オーシャン戦略がこれまでの経営戦略論の枠組みにおいて、
どのような意義をもち、またどのように位置付けられるのかについて考察することにする。
具体的には、
そこで、これからのセクションでは、ブルー・オーシャン戦略がこれまでの経営戦略論の枠組みにおいて、
どのような意義をもち、またどのように位置付けられるのかについて考察することにする。
具体的には、
(1)企業戦略としての成長戦略との関係(Section.15)
(2)事業戦略としての競争戦略との関係(Section.16)
(3)機能戦略としてのマーケティング戦略との関係(Section.17 〜 18)
(4)ドメインとの関係(Section.19)
について順に検討する。Section.15
ブルー・オーシャン戦略と企業戦略としての成長戦略との関係
企業戦略とは、企業全体の方向性についての戦略であり、
それは、内容的には、企業の成長の方向性を決定する「成長戦略」となる。
成長戦略は、
ブルー・オーシャン戦略は、未知の市場空間・新しい顧客を創造するものであるため、
「多角化戦略」の一類型として位置付けることができる。
ただ、多角化戦略は、自社にとっての新規製品や自社にとっての新規顧客であればよいのに対して、
そして、ブルー・オーシャン戦略は、単に、市場シェアや市場成長率から事業選択や市場参入を考える形式論ではなく、
その開発・展開方法を提示している実質論であるという点において、経営戦略論に大きな貢献を果たしたと言うことができる。
つまり、実際の企業経営において最大の関心事となる、どのような事業を行うべきかということについて、
既存の理論は、その中身については何も示唆しないのに対して、
ブルー・オーシャン戦略は、戦略キャンバスを用いた価値曲線の創出を通じて、それに応えようとするものである。
それは、内容的には、企業の成長の方向性を決定する「成長戦略」となる。
成長戦略は、
(1)「市場浸透戦略(=既存製品×既存顧客)」
(2)「新製品開発戦略(=新規製品×既存顧客)」
(3)「新市場開拓戦略(=既存製品×新規顧客)」
(4)「多角化戦略(=新規製品×新規顧客)」
に分類できるが、この中では、(2)「新製品開発戦略(=新規製品×既存顧客)」
(3)「新市場開拓戦略(=既存製品×新規顧客)」
(4)「多角化戦略(=新規製品×新規顧客)」
ブルー・オーシャン戦略は、未知の市場空間・新しい顧客を創造するものであるため、
「多角化戦略」の一類型として位置付けることができる。
ただ、多角化戦略は、自社にとっての新規製品や自社にとっての新規顧客であればよいのに対して、
ブルー・オーシャン戦略は、自社にとって新規であるばかりでなく市場全体にとって新規である必要がある
ため、よりハードルの高い戦略であると言える。そして、ブルー・オーシャン戦略は、単に、市場シェアや市場成長率から事業選択や市場参入を考える形式論ではなく、
その開発・展開方法を提示している実質論であるという点において、経営戦略論に大きな貢献を果たしたと言うことができる。
つまり、実際の企業経営において最大の関心事となる、どのような事業を行うべきかということについて、
既存の理論は、その中身については何も示唆しないのに対して、
ブルー・オーシャン戦略は、戦略キャンバスを用いた価値曲線の創出を通じて、それに応えようとするものである。
Section.16
ブルー・オーシャン戦略と事業戦略としての競争戦略との関係
事業戦略とは、個別事業をどのように展開していくのかということについての戦略であり、
それは、内容的には、他社との競争で優位に立つことを考える「競争戦略」となる。
ブルー・オーシャン戦略と競争戦略との関係については、上述したように著者達自身が言及している。
ただ、
しかし、グローバリゼーションが浸透し、メガ・コンペティションと言われる状況において、
製品のコモディティ化が急速に進展する事態を鑑みると、
そのような主張が妥当な局面が登場しているのかもしれないとも思わせる。
とは言え、
それは、内容的には、他社との競争で優位に立つことを考える「競争戦略」となる。
ブルー・オーシャン戦略と競争戦略との関係については、上述したように著者達自身が言及している。
ただ、
競争戦略がレッド・オーシャンに対応した戦略であり、差別化戦略も有効とは言えない
との著者達の主張に対しては、より慎重な検討が必要であるとは思われる。しかし、グローバリゼーションが浸透し、メガ・コンペティションと言われる状況において、
製品のコモディティ化が急速に進展する事態を鑑みると、
そのような主張が妥当な局面が登場しているのかもしれないとも思わせる。
とは言え、
既存の競争戦略の定石においては「低コスト」か「差別化」の二者択一を迫られるのに対して、
ブルー・オーシャン戦略においては、その両立が可能である
との主張は、定型化・固定観念化した戦略概念を打破するものとして、大きく評価することができる。ブルー・オーシャン戦略においては、その両立が可能である
Section.17
ブルー・オーシャン戦略と
機能戦略としてのマーケティング戦略との関係(1):
製品戦略との関係
機能戦略とは、研究開発、生産、販売、財務、人事など、企業の様々な機能についての戦略であるが、
ブルー・オーシャン戦略は、その中でもマーケティング戦略との関係が深いと言える。
その中でも特に、マーケティング戦略のサブ戦略としての製品戦略との関係が深いと言える。
すなわち、ブルー・オーシャン戦略は、
製品戦略は、マーケティング戦略の中の中核であり、
新製品の企画・開発は、あらゆる企業にとって、その生命線を握る重要課題である。
しかしというか、そのためというか、主流のアカデミックなマーケティング研究は、表層的・形式的次元に留まり、
必ずしも有効な新製品開発に繋がる本質的な研究成果が得られているとは言い難いように見受けられる
(ただし、主に日用品的製品領域を対象しているが、
この分野の数少ない優れた研究に、実務家の梅澤伸嘉氏によるものがある)。
それに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
ブルー・オーシャン戦略は、その中でもマーケティング戦略との関係が深いと言える。
その中でも特に、マーケティング戦略のサブ戦略としての製品戦略との関係が深いと言える。
すなわち、ブルー・オーシャン戦略は、
ブルー・オーシャン=非競争状態となる新しい製品分野を創造する
ということであるので、製品戦略としても捉えることができる、ということである。製品戦略は、マーケティング戦略の中の中核であり、
新製品の企画・開発は、あらゆる企業にとって、その生命線を握る重要課題である。
しかしというか、そのためというか、主流のアカデミックなマーケティング研究は、表層的・形式的次元に留まり、
必ずしも有効な新製品開発に繋がる本質的な研究成果が得られているとは言い難いように見受けられる
(ただし、主に日用品的製品領域を対象しているが、
この分野の数少ない優れた研究に、実務家の梅澤伸嘉氏によるものがある)。
それに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
(1)目標水準の設定 = 非競争状態となる新しい製品分野の創造
(2)目標達成のための具体的方策の提示 = 戦略キャンバスなど
というように、製品開発に一定の指針・方策を示したものとして位置付けることができる。Section.18
ブルー・オーシャン戦略と
機能戦略としてのマーケティング戦略との関係(2):
ブランド戦略との関係
また、ブルー・オーシャン戦略は、マーケティング戦略の中のブランド戦略とも深い関連を持つと言える。
(ただし、ここでの「ブランド」とは、高額品という意味ではなく、
ユーザーからプラスの価値を持って独自の存在として受け入れられている商業的名称という意味である。)
ブルー・オーシャンとは、繰り返しになるが、
「他社との競争がない」ということは、すなわち、その製品やそれを提供している企業の存在が、
自社製品や自社の存在が「他製品や他社とは決定的に異なるものとして認識されている」ということは、結果として、
既存のマーケティング理論におけるブランド戦略論では、ブランドを計量化・数値化することに重点が置かれていたり、
既に存在するブランドネームの形式的な展開方法に重点が置かれているようであるが、本質的に重要なのは、
それに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
(1)ブランドの提供価値の問題に対して
(ただし、ここでの「ブランド」とは、高額品という意味ではなく、
ユーザーからプラスの価値を持って独自の存在として受け入れられている商業的名称という意味である。)
ブルー・オーシャンとは、繰り返しになるが、
未知の市場空間
であり、そこでは他社との競争がない
ということである。「他社との競争がない」ということは、すなわち、その製品やそれを提供している企業の存在が、
他製品や他社とは決定的に異なるものとして認識されている
ということでもある。自社製品や自社の存在が「他製品や他社とは決定的に異なるものとして認識されている」ということは、結果として、
本質的に、その製品や企業がブランド化している
ということでもある。既存のマーケティング理論におけるブランド戦略論では、ブランドを計量化・数値化することに重点が置かれていたり、
既に存在するブランドネームの形式的な展開方法に重点が置かれているようであるが、本質的に重要なのは、
(1)個別のブランドにおいて、そのブランドがどのような価値を提供するのか、
すなわち、そのブランドがどのように顧客に認知されるのか
というブランドの提供価値=認知価値=質の問題であり、それを踏まえて、すなわち、そのブランドがどのように顧客に認知されるのか
(2)既存ブランドをどのように修正していくのか・新規のブランドをどのよう立ち上げていくのか
という個別ブランド展開の中身の問題である。それに対して、ブルー・オーシャン戦略は、
(1)ブランドの提供価値の問題に対して
「戦略キャンバス」という開発ツールを提供している(=個別ブランドの戦略の構築面)
(2)個別ブランド展開の中身の問題に対しては、「バリュー・イノベーション」というアプローチを提唱している(=個別ブランドの戦略の実行面)
と捉えることができる。Section.19
ブルーオーシャン戦略と企業ドメイン
企業ドメインは、経営戦略論においては、経営理念と経営戦略を繋ぐものとして位置付けられている。
経営理念よりも具体性があるが、経営戦略よりも抽象度が高い、と考えても良い。
つまり、企業ドメインとは、
実務的には、
経営戦略論において、内容の具体性・抽象度ということに関して、ブルー・オーシャン戦略を位置付けると、
著者達により提示されている戦略は、明らかにここで言う企業ドメインよりも具体性が高いと言える。
したがって、その意味では、
一方、「未知の製品分野」「未知の産業分野」を切り開くものとしてのブルー・オーシャン戦略は、
特に、企業ドメインにおける「何を」「どのように」の次元の見直しを迫る可能性がある。
具体的には、「何を」の次元に対しては戦略キャンバス・価値曲線が見直しを迫り、
「どのように」の次元に対してはバリュー・イノベーションが見直しを迫ることになる。
この点は、実際にブルー・オーシャン戦略を開発・実行するに際して、十分に留意しておく必要がある。
つまり、
平たく言えば、ブルー・オーシャンに到達するために、
このことは、ブルー・オーシャン戦略が、製品戦略やブランド戦略としての一面を持っているとしても、
それは企業の機能戦略の次元に留まるものではなく、
経営理念よりも具体性があるが、経営戦略よりも抽象度が高い、と考えても良い。
つまり、企業ドメインとは、
経営理念を踏まえて経営戦略の方向性を示唆するもの
である。実務的には、
自社が「誰に」「何を」「どのように」提供するのか
を決定することにより構築する。経営戦略論において、内容の具体性・抽象度ということに関して、ブルー・オーシャン戦略を位置付けると、
著者達により提示されている戦略は、明らかにここで言う企業ドメインよりも具体性が高いと言える。
したがって、その意味では、
ある企業が目指すブルー・オーシャン戦略は、その企業の企業ドメインに制約される
ことになる。一方、「未知の製品分野」「未知の産業分野」を切り開くものとしてのブルー・オーシャン戦略は、
特に、企業ドメインにおける「何を」「どのように」の次元の見直しを迫る可能性がある。
具体的には、「何を」の次元に対しては戦略キャンバス・価値曲線が見直しを迫り、
「どのように」の次元に対してはバリュー・イノベーションが見直しを迫ることになる。
この点は、実際にブルー・オーシャン戦略を開発・実行するに際して、十分に留意しておく必要がある。
つまり、
ブルー・オーシャン戦略の策定においては、自社の従来のドメインを再定義する必要があるかもしれない
ということである。平たく言えば、ブルー・オーシャンに到達するために、
自社の企業ドメイン=自社の既存・暗黙の考え方・動き方を一度疑ってかかる必要がある
ということである。このことは、ブルー・オーシャン戦略が、製品戦略やブランド戦略としての一面を持っているとしても、
それは企業の機能戦略の次元に留まるものではなく、
企業戦略全体の方向性をも規定するパースペクティブを持っているものである
ということを意味している。Section.20
現代企業にとってのブルー・オーシャン戦略の意義
オンリーワン戦略としてのブルー・オーシャン戦略
ここまで、ブルー・オーシャン戦略について、独自に、経営戦略論全体の枠組みの中での意義・位置付けを検討してきたが、
その結果、ブルー・オーシャン戦略は、既存の経営理論に大きなインパクトを与えるものである、ということであった。
これまでは経営戦略の各論に対応づけて考えてきたわけであるが、そこで今度は、その中小企業にとっての意味を考えてみたい。
中小企業にとって、果たして、ブルー・オーシャン戦略とは何なのか、ということである。
私見であるが、結論としては、
「ナンバーワンからオンリーワンへ」という指向性の転換は、1990年代半ば頃より提唱された考え方で、
それは、シェア偏重主義に陥り硬直化した大企業や、自社の存在意義を明確にしたい中小企業に、戦略指向面で、
大きなインパクトをもたらすものであった。
しかし、オンリーワン戦略の中身を構築するための経営戦略理論は、これまで提示されてはこなかったように思われる。
それに対して、「非競争状態(=他社との競争がない状態)を創出する」というブルー・オーシャン戦略は、
その結果、ブルー・オーシャン戦略は、既存の経営理論に大きなインパクトを与えるものである、ということであった。
これまでは経営戦略の各論に対応づけて考えてきたわけであるが、そこで今度は、その中小企業にとっての意味を考えてみたい。
中小企業にとって、果たして、ブルー・オーシャン戦略とは何なのか、ということである。
私見であるが、結論としては、
現代企業にとってのブルー・オーシャン戦略とは、オンリーワン戦略の具体的開発・展開方法である
ということであると考える。「ナンバーワンからオンリーワンへ」という指向性の転換は、1990年代半ば頃より提唱された考え方で、
それは、シェア偏重主義に陥り硬直化した大企業や、自社の存在意義を明確にしたい中小企業に、戦略指向面で、
大きなインパクトをもたらすものであった。
しかし、オンリーワン戦略の中身を構築するための経営戦略理論は、これまで提示されてはこなかったように思われる。
それに対して、「非競争状態(=他社との競争がない状態)を創出する」というブルー・オーシャン戦略は、
「競争がない」という意味において、その製品・企業がオンリーワンであることを目指しているものであり、
その具体的開発方法・展開方法を提示したものである
と言える。その具体的開発方法・展開方法を提示したものである
Section.21
「異質化」が求められる時代の経営戦略としてのブルー・オーシャン戦略
ブルー・オーシャン戦略は、その提唱者達によれば、
しかし、前セクションで述べたように、ブルー・オーシャン戦略とは、
ただ重要なことは、ブルー・オーシャン戦略という理論を金科玉条のごとく奉ずるのではなく、
その本質をつかんで、自社の経営活動に上手に取り入れることである。
ブルー・オーシャン戦略の本質とは、以下の3点にまとめることができる。
「コモディティ化」という「同質化」に飲み込まれないような「異質化」が求められる現代にあって、
まさに「オンリーワン」となる「価値ある異質」を創出するための試みに他ならない。
この意味で、ブルー・オーシャン戦略の考え方は、単なる机上の理論ではなく、大いに使える理論である。
顧客に新しい価値を提供し、それによりオンリーワンを指向する企業においては、
自社独自の取り組みにより「価値ある異質」の創出を目指すブルー・オーシャン戦略の考え方は、
非常に参考になるものと思われる。
新しい製品分野を創造する
新しい産業を創造する
ということであり、これだけを見ると、大企業のための戦略のようにもとれる。しかし、前セクションで述べたように、ブルー・オーシャン戦略とは、
オンリーワンを目指すオンリーワン戦略である
ため、これは、中小企業にとっても有効な考え方である。ただ重要なことは、ブルー・オーシャン戦略という理論を金科玉条のごとく奉ずるのではなく、
その本質をつかんで、自社の経営活動に上手に取り入れることである。
ブルー・オーシャン戦略の本質とは、以下の3点にまとめることができる。
(1)戦略意思面においては、「オンリーワンとなるような市場領域を開拓する」という大志を抱くこと
(2)戦略開発面においては、戦略キャンバスというツールを有効に活用し、
顧客に新しい価値を見い出していただけるような「製品・サービスの新しい価値曲線を創出する」こと
顧客に新しい価値を見い出していただけるような「製品・サービスの新しい価値曲線を創出する」こと
(3)戦略実行面においては、創出した価値曲線を形あるものとするために「全社的に取り組む」こと
「製品・サービスの新しい価値曲線を創出する」とは、「コモディティ化」という「同質化」に飲み込まれないような「異質化」が求められる現代にあって、
まさに「オンリーワン」となる「価値ある異質」を創出するための試みに他ならない。
この意味で、ブルー・オーシャン戦略の考え方は、単なる机上の理論ではなく、大いに使える理論である。
顧客に新しい価値を提供し、それによりオンリーワンを指向する企業においては、
自社独自の取り組みにより「価値ある異質」の創出を目指すブルー・オーシャン戦略の考え方は、
非常に参考になるものと思われる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
読者の皆様にとりまして、当コラムが、
多少なりともお役に立つものとなりましたら幸いです。
読者の皆様にとりまして、当コラムが、
多少なりともお役に立つものとなりましたら幸いです。
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