Think Future, Imagine Alternative, Create Real!Across The Information Technology
当コラムについて
コラム「Across The Information Technology」では、中小企業とITというテーマで、その深層・真相を捉えるべく、Web開発と経営戦略の双方を見据えつつ、中小企業にとっての情報技術の本質を探っていきます。
問題意識
真に情報技術を活用するためには、「メディアで取り上げられている」「同業他社もやっている」等の理由ではなく、また代理店等の業者任せではなく、中小企業者の方自らがその本質を把握し、主体的に取り組む必要があります。
情報技術への本質的・戦略的対応
情報技術が経営戦略の根幹に深く関わるようになっている現在においては、その本質を見極めて、それこそ戦略的に対応することが肝要です。このコラムが、その取り組みのきっかけや展開のヒントとなれることを願っております。

2010年10月20日

Column About SME & IT : Across The Information Technology vol.3

Twitter、スモールワールド・ネットワーク、知識創造

Across The Information Technology
コラム「Across The Information Technology」の第3回目(vol.3)となる今回は、vol.1「Twitterと脳、その構造的類似性について」、vol.2「Twitterと脳、その構造的類似性について(捕捉)」に引き続いて Twitter を取り上げます。Twitter が創出するネットワークの特徴を踏まえて、Twitter 的機能を実現するマイクロブログ・システムを企業内のコミュニケーション・システムとして導入することの戦略的意味を、「知識創造」の観点から考えたいと思います。具体的には、Twitter が「スモールワールド・ネットワーク」であり、Twitter 的機能を実現するマイクロブログ・システムを企業内のコミュニケーション・システムとして導入することにより、企業内に「スモールワールド・ネットワーク」が創出されることを考えます。そして、その「スモールワールド・ネットワーク」が、「知識創造」をどのように促進するのかについて考察します。

Twitter、スモールワールド·ネットワーク、知識創造

Section.1
企業内コミュニケーション・システムとして、
様々な Twitter 的マイクロブログ・ウェブ・アプリケーション・システム(=マイクロブログ・システム)が開発されている。
大手では、Chatter(Salesforce)Project Vulcan(IBM)Office Talk(Microsoft)Quad(Cisco) 等、
それ以外では、yammerStatus.netOpen Atrium(Drupal ベース)Prologue(WordPress ベース) 等である。
私は、それらの詳細について把握しているわけではないが、
Twitter について「ネットワーク科学」的な知見に基づいて原理的に考察することを通じて、
企業が、社内のコミュニケーション・システムとして、
そのような Twitter 的機能を実現するマイクロブログ・システムを導入することの戦略的意味を考えたい。
戦略的に考えるためには(戦術的にではなく)、必然的に、原理的に考える必要があるためである。
ただし、私は、「知識創造」が現代企業にとって成長・発展の鍵を握っていると考えているため、
「知識創造」にとってどのような意味があるか、ということになる。
以下、次のように展開したい。
(1)Twitter というネットワークの特徴(セクション2〜4)
(2)「ネットワーク科学」による知見=「スモールワールド・ネットワーク」の特徴(セクション5〜9)
(3)「スモールワールド・ネットワーク」としての Twitter が創出する社会ネットワークの特徴(セクション10〜12)
(4)Twitter 的マイクロブログ・システムによる、「知識創造」のための「場」の創出(セクション13〜19)


* :TeckCrunch の2012年6月26日の記事によると、マイクロソフトが Yammer を買収したとのことです。
   「Microsoft、企業内TwitterのYammer買収を確認―価格は12億ドル
   マイクロソフトはこれをオフィス系サービスとして展開していくものと思われますが、
   この点からも、企業内におけるマイクロブログ・システムが高く評価されていることがわかります。
    ※2012年07月03日追記

* :ダイヤモンドオンライン の2014年7月11日の記事では、Chatter を活用する アクセンチュア の事例が紹介されています。
   「メールでの問い合わせは禁止!世界中の社員の知恵を「社内SNS」で手に入れる
   この記事は、「ワークスタイル」が企業の競争優位創出要因の 1 つとなるとのテーマのもとで展開されている
   『「働き方」という経営問題」』シリーズの連載第 4 回目で、「知恵の超高速な共有化」のために
   アクセンチュアというグローバル組織が Chatter を導入した経緯や、その活用方法・効果等についてレポートされています。
    ※2014年07月14日追記


 ※当コラムは、「スライドショー」になっています。
  Next ボタン のクリックにより、ページ遷移無しで、瞬間的に「次のセクション」に切り替わります。
  同様に、Prev ボタン のクリックにより「1つ前のセクション」に、
  First ボタン のクリックにより「最初のセクション」に、
  Last ボタン のクリックにより「最後のセクション」に切り替わります。
Section.2
Twitter における連携状態(following・followers)を考察すると、
フォローしている人(following)を増やすにあたり、
ある参加者は、「自分がフォローしている人(= Timeline への入力元)がフォローしている人」をフォローする
そして(同じことだが)、
ある参加者をフォローしている人は、「ある参加者(= Timeline への入力元)がフォローしている人」をフォローする
という行為が切っ掛けとなりやすい構造になっている。
また、「リツイート(RT)」は、これらの行為を促進する可能性がある。
さらに、Twitter が提供する「おすすめユーザー」という機能は、
このようなアルゴリズムをベースにして、新しくフォローすべき人をレコメンドしているものと考えられる。
そして、「フォロー返し」と言われるように、
自分をフォローしてくれた人を、自分もフォローする
ということもよくあり得る。
とすれば、
Twitter の局所局所において、
任意の参加者を中心にしたフォローしている(following)とフォローされている(followers)の関係性が蜜となり、
疑似的な「近接密集性」が生じる可能性が高い。
すなわち
Twitter というネットワークが「高いクラスター性」という特徴を持つ可能性がある。
わけである。
Section.3
また、Twitter においては、複数の異なるテーマに興味・関心を抱き、
それぞれのテーマにおいて、following・followers の関係にある人は少なくない、というか、非常に一般的であると思われる。
例えば、「映画」というテーマと「料理」というテーマに興味・関心がある人が、
各々のテーマでフォローしている・フォローされているというクラスターの関係性の網の中にあるとすると、
(前セクションで見たように、このような状態は容易に出現し得る、と考えられる)
この人は、映画クラスター(コミュニティ)と料理クラスター(コミュニティ)を繋ぐ「ショートカット」になる、
ということである。
つまり、
Twitter においては、非常に多くの「ショートカット(=クラスター(コミュニティ)を結ぶリンク)」が存在し得る。
ということになる。

 ※人間の集団を研究する「社会ネットワーク研究」においては、
  ここで「クラスター」「コミュニティ」と呼んでいる、人々の密接な連携状態のことを、「クリーク」と呼ぶ。
  また、ここで「ショートカット」と呼んでいる、クラスター間・コミュニティ間を繋ぐ連携のことを、
  クリーク間を繋ぐ連携として「ブリッジ」と呼ぶ。
Section.4
ここで一旦、Twitter についてまとめると、
Twitter は、「クラスター性」「ショートカット」という特徴を持つネットワークである
ということになる。
Section.5
一方、「ネットワーク科学」的な知見によると、前回コラム において見たように、
ネットワークが、「高いクラスター性(=近接密集性)」を持ち、かつ、
遠くのクラスターを連結するような「ショートカット」が存在する時、
そのネットワークは「短い平均距離(=「6次の隔たり」)」という特徴を持つ
ようになる。
そして、このような特徴を持つネットワークは、
スモールワールド・ネットワーク
と呼ばれる。
Section.6
ここで「高いクラスター性」とは、
ネットワークの中の任意の1つの構成要素に着目した時に、
それと連結している他の構成要素同士もまた連結しているような状態
のことであり、イメージ的には、
近接している複数の構成要素同士が蜜に連携し合っている状態(=近接密集性)
である。
「ショートカット」とは、
ネットワーク内のある構成要素が、遠くに位置するクラスターに属する構成要素と連携すること
である。
Section.7
また、ネットワークにおいて「距離」とは、
ある構成要素が他のある構成要素に到達するために、いくつの構成要素を介する必要があるか
という概念であり、「短い平均距離」とは、
そのネットワークのどの2つの構成要素に着目しても、それらが少数の構成要素を介することで連携している状態
ということである。
ネットワークのこのような状態は、社会学的には「6次の隔たり(6 Degrees of Separation)」と言われる。
これは、社会学的実験の結果から得られた認識で、ある社会(=社会ネットワーク)に着目した時に、
ある人から知り合いを辿って任意の別のある人に到達するためには、概ね6人を介するだけでよい
という帰納的法則性のことである。
このことは、人間の社会(=社会ネットワーク)だけでなく、他の様々なネットワークに見られる特徴として知られている。
ただし、「6次の隔たり」とは、文字通り解釈すると、
そのネットワークの「平均距離が6である」ということを示すことになるが、
この言葉は、平均距離が「6」という値を持つということに重点があるのではなく、
ネットワークを構成する要素同士が、思いの外、少ない構成要素を介することで連携している状態
を表すために使われる。
Section.8
つまり、「スモールワールド・ネットワーク」の特徴をもう少し分かりやすく整理すると、
(1)高いクラスター性(=近接密集性)
(2)遠くのクラスターを連結するような長距離の少数のリンク(=ショートカット)
という特徴を持つことにより、結果として、
(3)短い平均距離(=「6次の隔たり」)
を実現しているネットワークのことである
ということになる。
Section.9
ということで、ここまで見てきた Twitter というネットワークの特徴と、
「ネットワーク科学」による知見を総合すると、
Twitter は、「高いクラスター性(=近接密集性)」「ショートカットの存在」という特徴により、
「短い平均距離(=「6次の隔たり」)」という特徴を持つ可能性が高い。
すなわち、
Twitter は「スモールワールド・ネットワーク」である可能性が高い。
と言える。

 ※2010年10月21日追記
  「Sysomos、「6次の隔たり」理論をTwitterで検証」という記事を見つけました。
  この記事によると、
  ソーシャルメディアの統計分析サービスを提供する Sysomos が、Twitter におけるフォロー関係を調べた ところ、
  「Twitterではほとんどのユーザーが「5次以内の隔たり」で結びついている」との結果を得た、とのことです。
  つまり、Twitter においては、5人を介することで、ほぼ全てのユーザーに到達することができる、というわけです。
  この調査により、Twitter は「スモールワールド性」をもつネットワークであることが検証されたことになります。
Section.10
では、Twitter という「スモールワールド・ネットワーク」により実現される人々のネットワークは、
どのような特質を持つであろうか。
その答えの一端は、人間の集団をネットワークとして捉えて研究する「社会ネットワーク研究」という領域に求められよう。
「スモールワールド・ネットワーク」は「短い平均距離(=「6次の隔たり」)」を実現するが、
その時、「社会ネットワーク」は以下のような特徴を持つ、という。
「弱い紐帯の強さ(The strength of weak ties)」〜 マーク・グラノベッター氏
「信頼の解き放ち」〜 山岸俊男氏
(増田直紀氏著「私たちはどのようにつながっているのか」による)

 ※参考:・マーク・グラノベッター(マーク・グラノヴェッター)氏についての Wikipedia の情報
     ・山岸俊男氏のホームページ
Section.11
まず最初に、
「弱い紐帯の強さ(The strength of weak ties)」
とは、
いつもはあまり密接に繋がっていない知人(=弱い紐帯=weak ties)を通して、
有用な情報(=強さ=strength)がもたらされる。
という特徴を表している。
ここで「弱い紐帯」とは、ネットワークにおける「ショートカット」による関係性を指す。
一方「弱い紐帯」に対する「強い紐帯」は、ネットワークにおける「クラスター」による関係性ということになる。
Section.12
次に、
「信頼の解き放ち」
とは、
強い靭帯に囲まれている人々は安心して暮らすことができるが、
そのために手に入れられる情報の量が制限されるというかたちで機会コストを支払っている。
機会コストが大きい環境においては、
信頼に基づき弱い紐帯を辿ることができる「高信頼者」の方が大きな利益を得られる可能性がある。
すなわち、信頼こそが、人々を、既存のコミットメント関係から解き放つ。
という考え方である。
Section.13
そこで、本来の目的であった、
企業において Twitter 的機能を実現するマイクロブログ・システムを導入することの戦略的意味を、
「知識創造」の観点から考えたい。
ここまで見てきたことから、
Twitter 的マイクロブログ・システムを企業内コミュニケーション・システムとして導入することにより、
企業は、従業員をその構成要素とする「スモールワールド・ネットワーク」となる
と言える。
そして、その効果は、先に見たように、
「弱い紐帯の強さ(The strength of weak ties)」
「信頼の解き放ち」
である。
Section.14
まず、「弱い紐帯の強さ(The strength of weak ties)」について、これを「知識創造」の観点から捉えると、
情報の冗長性(=情報の重複性)」という概念をキーにして以下のように言える。
同一のクラスター内(=強い紐帯)では「情報の冗長性」が高く、
クラスター内では同質的情報交換となりやすい。
そのため、クラスター内での情報交換は、ネットワーク全体における「情報の冗長性」の増加に寄与しにくい。
ショートカットにより連携された異なるクラスター間(=弱い紐帯)では「情報の冗長性」が低く、
クラスター間では異質的情報交換となりやすい。
そのため、クラスター間での情報交換は、ネットワーク全体における「情報の冗長性」の増加に寄与する。
ここで、「クラスター」は企業内のある「部門」、「ネットワーク」は「企業全体」として捉えることができる。
そして、ナレッジ・マネジメントの提唱者である野中郁次郎氏は、著書「知識創造の経営」の中で、次のように述べている。
情報の冗長性は、
情報処理の効率性を追求するためには徹底的に排除すべき対象ではあるが、
情報間の関係生成が柔軟に行われるためには、
組織はできるだけ多くの起こりうる可能性に十分対応できる情報冗長性を含み込んでいなければならない。
情報冗長性は、知識創造を多様な側面から支援する要因となる。
情報冗長性は、組織成員がそれぞれの領域を侵し合い、問題点を生成させながら学んでいくことを可能にする。
Section.15
では、何故「情報の冗長性」の増大が重要なのかということになるが、
ここではそれを「創造性」「情報・知識への最早アクセス可能性」という、2つの視点から捉えておきたい。
まず「創造性」であるが、創造性に関心を持つ多くの研究者の方々に共通している知見は、
創造とは、突き詰めると、「既存の異質な概念の組み合わせ」である。
ということである。
企業活動において「知識創造」とは「イノベーション」をもたらすものであると言えるが、
上記の知見は、シュンペーターがイノベーションを「新結合(neue Kombination)」と呼んでいたこととも整合する。
すなわち、原理的には、
クラスター間の異質的情報交換(=これが、結果として、情報の冗長性の増大をもたらす)が、
創造性を刺激し、創造性を発現するように機能し得る。
ということである。

 ※この意味で、「創造」を「ネットワーク科学」的に捉えると、「創造」とは、
  遠くに位置する異質な「概念クラスター」同士を繋ぐ「ショートカット」が生じることである
  と言えるかもしれない。

次に「情報・知識への最早アクセス可能性」であるが、この意味は読んで字のごとくであり、
これが、複雑な環境において、組織が情報・知識の創造を「効率的」に行うための原則的条件、となる。
そのために、野中氏によると、具体的には、
(1)組織の成員が、誰がどのような情報を持っているかを知っていること
(2)成員の認知能力に過剰な負荷を与えないような最小有効な成員間の連結を付けること
が必要となる。
Twitter 的マイクロブログ・システムでは、この2点は、
価値ある情報を発信する情報源を、ユーザー自らが選定する「フォロー」という仕組み
 = ユーザー個々人は、自らが必要とする情報を発信しているユーザーを選別し、彼らからの情報を受け取る
あるユーザーによる情報発信を、他のユーザーが再情報発信する「リツイート」という仕組み
 = ある問いかけ(情報発信)を自分で問題解決できない場合、それを自分のフォロワーに向けて発信することで、
   その問いかけをさらに多くの人と共有できる
 = それにより、問いかけの発信者が、その問いかけに対する解をもつ人と連携できる可能性が高まる
   (しかも、この連携は「短い平均距離」により、非常に効率的(=最小有効的)に行われる)
により、自律分散的に実現されると考えられる。
Section.16
次に、「信頼の解き放ち」について、この考え方を企業に適用してみると、
部門内での対応(=強い紐帯=安心に基づく関係=不確実性が低い状態での関係)では問題解決できない状況にある時、
部門を超えた関係(=弱い紐帯=信頼に基づく関係=不確実性が高い状態での関係)を構築することで、
問題解決が図られる可能性がある。
ということになる。
この前提には、企業内の各部門は、本来的には協力関係であるべきであるが、
現実には、往々にして、対立関係や無関心に陥りがちであるという認識がある。
つまり、
異なる部門間での対立関係や無関心を、「ショートカット」的な「信頼」に基づく連携によって乗り越えよう
ということである。
部門(=クラスター)を超えた情報交換という面では、先の「弱い紐帯の強さ」と同様であるが、
「弱い紐帯の強さ」においては情報内容・情報価値という側面に光が当てられていたのに対して、
「信頼の解き放ち」においては情報受信者・情報発信者間の心理的側面に光が当てられている。
ここで再び、野中氏の言葉を引用させていただくと、
個々の個人、集団あるいは組織間で情報冗長性が見られるとき、それらの間に信頼が形成される可能性が高まる。
「信頼は社会システムにおいて重要な潤滑油」(アロー、1974)であり、
信頼関係なくしては、それぞれの担当領域の境界を超えて上下左右に共振し合い、
次々と情報を創造していく動的協力関係(ハーケン、1985)は得られないであろう。
つまり、密接な相互作用と情報共有を通じて情報冗長性が信頼を生み出し、
それが機会主義(=虚偽や欺瞞などによる自己利益の追求)の発生を抑えるものとして機能するのである。
となる。
Section.17
以上、Twitter 的マイクロブログ・システムについて、ネットワーク科学をベースに「知識創造」を考えてきたわけであるが、
まとめると以下のように言える。
Twitter 的マイクロブログ・システムは、
「スモールワールド・ネットワーク」を生み出す社内コミュニケーション・システムとして、
部門を超えた「ショートカット(=弱い紐帯)」的連携を創出し、
それが、部門を超えた情報共有を促進し(=強さ)、部門を超えた信頼関係を醸成する(=信頼の解き放ち)。
それにより企業全体における「情報の冗長性」が高まり、それが「知識創造」を促進する。
すなわち、
Twitter 的マイクロブログ・システムは、知識創造の「場」となり得る。
ということになる。
Section.18
さて、最後に、ここで見た結論を補強するために、「ナレッジ・イネーブリング」という考え方について簡単に触れておきたい。
「ナレッジ・イネーブリング」とは、ここまで度々引用させていただいた野中氏が、
知識創造企業」という著書において企業における知識創造のプロセスを理論化した後、
実際に「知識創造」が実現されるためには、
マネジメント面・組織構造面・システム面・人材面等においてどのような条件・環境が必要か、
という問題意識に基づく研究により得られた認識である。
非常に単純に要約すると、ナレッジ・イネーブリングには、以下のような5つの実践項目が有り、
(1)ナレッジ・ビジョンの浸透
(2)会話のマネジメント
(3)ナレッジ・アクティビストの動員
(4)適切な知識の場作り
(5)ローカル・ナレッジのグローバル化
それらが、以下のような、
(1)暗黙知の共有
(2)コンセプトの創造
(3)コンセプトの正当化
(4)プロトタイプの製作
(5)知識の組織全体での共有
という「組織における知識創造の5つのプロセス」の様々な段階に影響を与える、ということである。
そして、5つのナレッジ・イネーブリングの中でも特に重要なのが、
(A)会話のマネジメント
であり、これが、「組織における知識創造の5つのプロセス」の全段階に非常に大きな影響を与える、という。
また、ナレッジ・イネーブリングの前提として、
(B)組織内において「ケア」を基本とした人間関係
が必要となる、ということである。
Section.19
(A)「会話」ということで言えば、まさに、Twitter 的マイクロブログ・システムは会話を促進するものであり、
(B)「ケア」ということで言えば、先に見た「信頼の解き放ち」がそれを促進する。
Twitter 的マイクロブログ・システムは、まさに、「ナレッジ・イネーブリング」を促進する、と言えよう。
ただし、「会話のマネジメント」とあるように、そこには、
創造的会話を促進するための一定のルールやカルチャー
のようなものが不可欠となる。
また、「「ケア」を基本とした人間関係」については、その企業において、
「相互信頼」「積極的な共感」「進んで助け合うこと」「寛大な判断」「勇気」を奨励し評価する企業文化・企業風土
が、育まれている必要がある(「ナレッジ・イネーブリング」より)。
それは、通常の情報システムにおいて「運用」方法が課題となるように、Twitter 的マイクロブログ・システムにおいても、
それを「知識創造」に向けてどのように運用するのかが、大きな課題となることを示している。
経営者の方が、この点をどの程度深く認識し、その実現に向けてどれだけ主体的・積極的に尽力するかにより
このシステムの導入の成果が大きく左右されるものと考えられるが、その点をしっかり抑えることにより、
Twitter 的マイクロブログ・システムは「知識創造」のツールとして、
企業経営において、非常に有効ものとなり得ると考えられる。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
読者の皆様にとりまして、多少なりともお役に立つものとなりましたら幸いです。

2022年10月
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31